服は、どこで探して買っている?アンケートから見えた、30歳の「ハイブリッド型」な購買行動

Summary

30歳の私たちのリアルクローズとは?
前回は、このようなテーマを掲げ、友人たちへのインタビューを実施。情報源や服選びの正解が多様化したことや、服選びに「納得感を求めている」という意識があることが分かりました。

では、30歳を迎えた私たちは実際にどのように服を選び、購入しているのでしょうか?
今回はアンケートを通じて見えた「リアルな購買行動の傾向」「服選びの手がかり」をデータと共に考察します。

日頃の購買行動を知るために、「服に興味がある」30歳世代の人達にアンケートを実施。XとInstagramの2つのチャネルでアンケートへの協力を周知した結果、41件の回答が集まりました。時間を使ってくれた皆様、本当に感謝です!

働き方は、服選びに大きく影響している

働き方が多様化した現在。まずは周りのみんなが、どのような働き方をしているのかを質問しました。

アンケート結果から、30歳世代の多くが出社をメインとした働き方をしていることが分かりました。

出社が必要な職種には、事務職やイベント関係、営業職など対面でのコミュニケーションが欠かせない仕事が多く見られます。一方、「リモートワークをしている」と回答した人の職種には、Webディレクターやデザイナー、編集職などクリエイティブ系の業務が目立ちました。

フル出社の場合「オンオフ、いつでも着られる服を買う」

出社は増加傾向にあり、会社に所属する人で「フルリモート」という形態はほぼ見られませんでした。
個別に質問したところ、以下のような回答がありました。

「会社の扱っている商材的にも、トレンドを意識していることや自分らしさを表現するための手段が服だと思っているから、オンとオフで服を使い分けるというのは、あまりない。」(30歳/男性/マーケター)

また「会社に制服がある」という人はほとんどなし。特に、職場でのドレスコードがない人ほど、トレンドを意識したり、自己表現のための服を選ぶ傾向が見られました。

リモート併用「出社もオンだけど、休日が一番『オン』なんだ」

リモート併用の働き方の場合には、出社時と在宅時で服装を切り替えるケースが多いようです。在宅時には「パジャマすぎない部屋着」や「オンライン会議で見える上半身だけ外着」など、リモートワークならではの実用的なスタイルが選ばれていました。

「リモートをしている日でもオンラインで会議があるので、だらしなく見えない服を着るようにはしている。どちらも『オン』だけど、出社するときの服装と休日の服装は、少し違う。言い方が難しいけど、休日の『めちゃくちゃオン!』という感じが、本来の服装だって思う。」(31歳/女性/デザイナー)

リモート勤務の日に比べたら、出社時の服装ももちろん「オン」。ですが、特に休日、友人や恋人とのデートの時が「めちゃくちゃオン」なのだとか。この表現には、私もすごく共感しました。

アプリと実店舗の役割分担

アンケート結果によると、30歳世代が最も参考にしている情報源はInstagram。次いで、実店舗ブランドサイトがランクインしました。

「オンライン中心」と思われがちな時代でも、実店舗を活用している割合が高いこと。これはかなり意外でした。
友人や知人との会話で、スマートフォンの画面を見ながら服の話をすることが多い印象。「ウィンドウショッピング」という文化は、デジタル上でも根付いているのかもしれません。

InstagramやPinterestで、何を見ている?

前回のインタビューで、服選びにはさまざまな価値観が反映されることに気づかされました。特に気になったのは、InstagramやPinterestといったツールの具体的な活用方法です。
そこで、「どのような目的で使っているのか」を質問したところ、以下のような結果になりました。

個別のインタビューでは、「好みのアカウントをフォローし、定期的にチェックしている」という声が多くありました。コーディネートを参考にしたり、自分のスタイルに合うアイデアを探したりすることが目的のようです。

イメージを「保存」できる機能は、あまり使われていない?

InstagramやPinterestには投稿を「保存」できる機能があり、気になる情報を後から見返すことができます。しかし、保存機能を使っていると答えた人の多くが、「保存した投稿をほとんど見返さない」と回答しました。

また、保存機能を使わず、投稿を流し見して頭の中に印象を残す人も多くいるという回答も。「気になるものはスクリーンショットで保存している」という声もあったことから、「アプリを開かなくてもすぐ見返せる方が良い」という心理の現われなのかもしれません。

アプリは「全体」、実店舗は「個」を見る傾向

一方で、実店舗は「ネットで見た服の素材感や色を確認したいとき」や「具体的に購入を検討しているアイテムを探しに行くとき」に利用されることが多いようです。実際の購入意欲が高いときには、やはり実店舗でのリアルな体験が重視される傾向が見られました。

InstagramやPinterestは、トレンドやコーディネートの「全体」のイメージを掴むための情報収集ツールとして役立つ一方、実店舗ではアイテム単体の「個」のディテールや素材感を確認する場として活用されています。

オンラインとオフラインの融合が、30歳世代の「服選びのリアル」。1つの方法ではなく、両方をバランスよく使い分けている点が、ECの黎明期と呼ばれた時期以降に買い物をするようになった、この世代の特徴と言えるでしょう。

結局、どこで服を買っている?

服選びの段階で見えた、「オンラインとオフラインの融合」。
実際に購入するチャネルも、その要素が見受けられる回答結果となりました。

1位となったのは「オンラインストア」。

これは、コロナ禍での外出自粛やECサイトの機能向上が背景にあると考えられます。多くのサイトで「サイズレコメンド機能」が導入され、着用イメージがつかみやすくなったことや、オンライン限定商品、クーポン、支払い方法の多様化も利用者を後押ししているのでしょう。

意外だったのは、「実店舗」が2〜5位にランクインしている点。服の参考を探す際に実店舗を訪れる行動がまだ根付いていることは、多くの人が納得して買い物をしたいという気持ちを持っていることの表れなのかもしれません。

なかでも注目すべきは、4位にランクインした「リユースショップ」
物価高など経済的な影響から、「服は好きだけど、かけるお金は少しでも抑えたい」という意識が強まっていることが背景にあると考えられます。
前回のコラムで触れた「ちゃんとして見える服」を、少しでも安く手に入れたいという価値観も、ここに反映されていると感じます。

オンラインストアの便利さに加え、実店舗でのリアルな体験で買い物への納得度を高める「ハイブリッド型」の購入行動が一般的であることが見えてきました。

30歳世代の服選びは「ハイブリッド型」。それぞれの魅力は?

アンケートやインタビューを通じて、30歳世代の服選びには、オンラインと実店舗を使い分ける「ハイブリッド型」の傾向が明らかになりました。

SNSでは、コーディネートの参考など「全体」を把握する目的で活用される一方、実店舗はアイテム単体の「個」のディテールを確認する場として利用されています。

私たち30歳世代にとって、SNSは学生時代からの相棒のような存在。欲しいものがあるときも、特に目的がないときでも、「息を吸うように」当たり前に開き、「情報の流し見」を楽しむことが習慣となっています。この行動は、デジタル上での「ウィンドウショッピング」として機能しているとも言えるでしょう。

一方、会社帰りに実店舗へ立ち寄る行動は、今も根付いています。これは、子どもの頃に両親と百貨店やショッピングモールで買い物をした経験が影響しているのかもしれません。
こうした背景から、状況や好みに応じてECサイトや実店舗を使い分ける「選択肢」を、自然と持つようになったのでしょう。

ネットでは「全体」を捉え、実店舗では「個」を確認する。この柔軟な「ハイブリッド型」のスタイルこそが、30歳世代のリアルな服選びを象徴していると言えます。

次回は、オンラインと実店舗、それぞれの違いと魅力について、考えていきたいと思います。

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