30歳のリアルクローズ。私たちは服をどう選んでいるんだろう?

Summary

2024年も残り1ヶ月となり、多くの人が来年のことを考え始めるタイミングではないでしょうか?
私も例にもれず、少しの後悔とともに「来年はもう少しアクティブになってみよう」というふわっとした抱負を抱いています。

最近、よくご飯に行く友人が30歳を迎えました。
「なんだか服装を含め、周りからの見られ方なんかも少しずつ変化しているような気がするんだ」。
その一言をきっかけに、「ああ、私もそろそろ30歳か」と、改めて認識しました。

どこか大きな区切りのように感じていた「30歳」は、実際は気づいたら「ぬるっと」目の前に迫っていたような、不思議な感覚もあります。
日常の中では、年齢を重ねる実感は乏しいもの。
でも、ふと振り返ると、自分のファッションやライフスタイルが少しずつ変化していることに気づいたのです。

30歳が近づいて、変化した「服選び」

まずは私のエピソードから。以前までは、値段をかけるなら特徴的で被らないデザインの方が良い!と、クセのあるデザインのアイテムなどを選ぶ傾向にありました。

でも、30歳が近づいた今、服を選ぶ基準に少しずつ変化が生まれました。クローゼットにあるのは、無地で、至ってシンプルなデザインの洋服ばかり。ですが、1つのアイテムを何年も愛せるように、素材や質感にこだわって、納得のいく価格で購入するようにしています。

ユニークなデザインを好きな気持ちは変わらずに存在しています。以前は靴=消耗品というイメージでしたが、細部にこだわりたいという気持ちからスニーカーにはこだわっています。

さて、自分を振り返ったことで、みんなはどう思っているんだろう?と気になりました。
その答えを求め、周りの人たちにインタビューをしてきました。

友人たちと語る「30歳のリアルクローズ」

私の周りの、30歳に突入した(あるいはこれからする)友人・知人たちは、どんな瞬間にライフスタイルやファッションの変化に気づいているのだろう?

日常の中での小さな気づきや変化をシェアしながら、私たちの「リアルクローズ」を掘り下げていきたいと思います。

友人Aの場合
「日常が元通りになったら、クローゼットに着られる服がなくなっていた」

高校時代からの友人で漫画家をしている彼女は、「年相応に見えて、手の届く価格のアイテムを選ぶようになった」と話します。

「以前はアウトドアアイテムを多く愛用していたよね?」と聞くと、コロナ禍で人に会う機会が減り、服選びが機能性重視にシフトしていたことが理由だったそうです。
「映画館に行ったとき、冷房がかなり強くて。恋人に借りたシェルジャケットの暖かさに衝撃を受けたことがきっかけで、買うようになったかな」と振り返りました。

ふたたび服装を見直すきっかけとなったのは、最近になって人と会う機会が増えたこと。
以前着ていた服を出そうとクローゼットを見直したものの、体型や好みの変化で着られる服がほとんどなくなっていたといいます。

そのため現在は、手頃な価格のアイテムを中心に購入しているそう。仕事上のつながりでの食事会などに参加することが多く、短期間で同じ人に会うことが多いから、かぶるのを避けたいという狙いです。

「まだ、アウターと靴は揃っていないんだよね...」独り言のように呟く彼女。
本格的な寒さが来る前に、一緒にアウターを探しに行こうと約束しました。

友人Bの場合
「私らしくないと思う。けど、気分を上げてくれる服が『褒められ服』だった」

高校卒業以来久しぶりに再会したWebデザイナーの友人は、「着心地や素材の良さを重視するようになった」と語ります。

20代の頃は価格が手頃でデザインが気に入れば即購入することが多く、素材や機能性にはあまりこだわりがなかったそうです。
しかし30歳を意識するようになり、ファストファッションには手を出しづらくなり、「リラックスできるけれど、だらしなく見えない服」を選ぶようになったといいます。

今は「自分らしいと思える服を選びたい一方で、舐められたくない気持ちとの葛藤もある」とのこと。「トレンドに流されたい時もあれば、かぶりたくない時もあるし。服装で気分を表現してるかも?」と語り、気分やシーンによって選択を変える柔軟さを大切にしているようです。

最近は、ふわふわしたワンピースや花柄スカートなどを身につけているそう。「自分ぽくないな、でも可愛いから欲しい!みたいな動機で購入した服を着ていると、意外と褒められるんだよね」という、周りからの自分らしさを柔軟に受け入れる姿勢が印象的でした。

友人Cの場合
「仕事、日常、推し活。服装に3つの軸がある」

編集者として働く30歳の友人は、「安っぽく見えない、年相応の質の良さ」を意識しつつ、自分が「かわいい!」と思える服を選ぶのが1番の基準だと言います。

彼女の服選びには3つの軸があります。きちんと感を意識した「仕事用の服」、カジュアル寄りな「自分が好きな服」、それよりも明るく、おしゃれな「推し活で着る服」。
基本的にカジュアルなアイテムを好むものの、暗めの色に偏りがちなため、意識して明るい色の服を選ぶようにしているそうです。「明るい服の方が似合うよ」と言われたことがきっかけだった、と話す彼女のコーディネートから、その思いが伝わりました。

「暗い人間になりたくないし、つまらないと思われたくない。楽しい人でいたいんだ」と語る彼女の価値観は、20代後半になって大きく変化したといいます。
一人暮らしを始め、趣味である「推し活」をもっと楽しむためにブラック企業を辞めたことで、心に余裕も生まれました。自分でも、よく笑うようになったと感じているそうです。

「楽しい時間を過ごすことが、自分らしさにつながると感じる」と話す彼女。その内面の変化が、自然と服装にも表れているようでした。

友人Dの場合
「体もファッションの一部」

マーケターとして働いている、今回インタビューした中で唯一の男性のエピソード。
最近は、若いイメージのブランドは自然と選ばなくなり、シンプルでオーソドックスなアイテムにも目が向くようになったと言います。

「最近は以前よりも、ピッタリとしたトップスが多いよね?」と質問したところ、「トレンドだから着ている」とのこと。1年ほど前に筋トレを始めた影響だと思っていましたが、そうではなかったようです。
ただ、このスタイルに対して前よりも抵抗感は無くなったと思っているそうで、体型も素材の1つだと感じていることも教えてくれました。

服を選ぶ際、トレンドを意識する時はファストファッションを活用。一方で、好きなブランドのアイテムを購入する時は、トレンドに左右されず長く着られるかどうかを重視しているとのこと。
「靴や小物は、特にお金をかける意識がある」とも語っていて、力を入れるところと、そうでないところの強弱の付け方が、上手な人なのだろうと感じました。

友人たちの話を通じて見えてきた「30歳の服選び」

「30歳」という年齢は、すごく大きな節目のように思えていましたが、実際にはそれほど明確にファッションを変えよう!という意識を持つ人は少ないのかもしれません。

昔の30歳といえば、「社会的に一人前」という明確なイメージがあったけれど、今は働き方や価値観が多様化し、年齢でひと括りにできなくなっています。だからこそ、20代の延長のような感覚が続く「ぬるっと」という表現が、私のなかで適切であるように感じたのかもしれません。

ただ、友人たちへのインタビューを通じて、服の選び方に30歳という数字が影響を与えていたようにも感じます。「しっかりした感じ」とか、「年相応の」というキーワードは複数人から発され、その気持ちが反映されているのです。
それでも最終的には、自分自身が納得できる選択であることが、やはり大きな決め手になっているように感じました。

また、特に印象的だったのは、友人Aの「コロナ禍がファッションを見直すポイントになった」という話。予測外の社会状況が、ファッション観に少なからず影響を与えていたのです。人に会う機会が減ったことで服の選び方が変化。それが再び人と会う日常に戻った、今の価値観を生み出していると感じました。

「絶対的な正解」がない今、納得できる服選びってなんだろう?

現在のようにスマートフォンが普及する以前は、主な情報源は雑誌やテレビ。「これを読む」というスタンダードが年代別に存在し、これを参考に服選びができた時代もありました。

また、社会人としてのキャリア形成にもある程度の正解が存在し、ボーナスで旅行をしたり、ハイブランドのアイテムも比較的手が届きやすかったのです。

そんな中、私が高校生だった2010年頃、スマートフォンの普及とともに新しい形のサービスが次々と登場、その1つが「Instagram」でした。
当時は写真共有がメインだったこのサービスも、現在ではトレンドの発信源として注目を集めるだけでなく、「検索エンジン」的に活用されたりと、私たちの購買行動にも大きな影響を与える存在となっています。

スマートフォンとSNSの普及によって、私たちの服選びや情報収集の手段は大きく変化。多様な選択肢の中から、自分に合ったものを能動的に見つけていく時代になりました。

働き方や生活スタイルも多様化した現在。「これが正解」というものが、人それぞれに違ってくるのも当然です。

では私たちは、何を手がかりに自分が納得できる服選びをしているのでしょうか?また、どうやって購買行動をしているのでしょうか?
次回の連載では、このテーマをさらに掘り下げていこうと思います。

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