美容、ジュエリー、ファッションは「ジェンダーレス」が加速中

Summary

はじめまして、プランニング・エディターの磯です。

長年の雑誌編集者として誌面を作ってきましたが、デジタルも挑戦したいと思い、4月からPomaloに参加しました。編集者目線でFindingsを書いてみたいと思っています。

この数年ですっかり世の中に浸透した「LGBTQ」や「ダイバーシティ」という言葉に呼応するように、「女性らしさ」を際立たせるための美容、ジュエリー、ファッションの世界にもジェンダーレスの波が到来中です。この1〜2年でブランドの広告ビジュアルやアンバサダーに男性が起用されることが増えています。

個人的には昨今の韓国カルチャーの人気から、男性アーティストのファンデーションやアイラインを入れたメイク顔に見慣れてきたり、シャネルのカメリアやパールのアクセサリーを身に着けた姿を見ても「かっこいい!」と思うようになったりと、女性やZ世代のジェンダーへの意識の変化も大きいと感じています。

美容ブランドのアンバサダーは男性が主流に

4月にはシャネルのフレグランス&ビューティ、ウォッチ&ファインジュエリーの新アンバサダーにモデル・俳優の宮沢氷魚が就任というニュースも入ってきました。この1年間に発表された美容ブランド☓男性アンバサダーをチェックしてみましょう。(参考:Fashionsnap.com)

  • 「シャネル」フレグランス&ビューティ、ウォッチ&ファインジュエリーアンバサダー/宮沢氷魚(2022年4月)
  • 「クリニーク」ブランドアンバサダー/よしあき&ミチ姉弟[SNS総フォロワー250万越えのインフルエンサー](2022年4月)
  • 「アベンヌ」アンバサダー/町田啓太(2022年3月)
  • 「シュウ ウエムラ」日本ブランドアンバサダー/市川染五郎(2022年3月)
  • 「ランコム」化粧水Mr.クラリフィック アンバサダー/玉森裕太(2022年3月)
  • 「コーセーコスメポート」ソフティモ グローバルアンバサダー/劉宇[リュウユ・中国を拠点とする国際的アイドルグループ「INTO1」隊長](2022年2月)
  • 「イヴ・サンローラン・ボーテ」ブランドアンバサダー/JO120221月)
  • 「メイベリン ニューヨーク」メイベリン ファミリー/大平修造[俳優、モデル、デジタルアーティスト、TikTokは全世界で400万人のフォロワー](2021年9月)
  • 「トムフォード ビューティ」アジア・パシフィック トム フォード フレグランス アタッシェ/ヒョンビン(韓国)(2021年7月)
  • 「ディオール ビューティ」ジャパン アンバサダー/山下智久(2021年5月)[※吉沢亮もディオール ビューティ アンバサダー]

新製品のプロモーションにも男性の起用が増えています。「NARS」新作ファンデーション☓俳優・横浜流星、「資生堂」マキアージュ☓俳優・渡辺圭祐、「Dior」新リップスティック☓SnowMan・ラウール、「ゲラン」アベイユ ロイヤル☓俳優・磯村勇斗......、SNSのほか、美容誌や女性誌のビューティページのタイアップにも登場するなどして誌面を盛り上げています。

ちなみに『メンズノンノ』5月号では「話題のシェア美容アイテム33」という特集を組んでいます。「シェア美容」とは「ライフスタイルが違っていても、男性でも女性でも、社会人でも学生でも、『楽しい!』という共通の気持ちを与えてくれて、垣根を超えてシェアできるコスメや美容ギガのこと」だそう。Z世代には「楽しい!素敵!」という共感がとにかく大切です。

日本を代表するジュエラーもジェンダーレスの世界観を発信

インスタグラムで「#パール男子」と検索すると、1000件以上の投稿がアップされています。このパール男子ブームの火付け役は、2020年にミキモトの「My pearls,My style」キャンペーンに登場した俳優・千葉雄大さんのポートレートではないでしょうか。彼がパールのロングネックレスを幾重にも重ねている写真は美しくインパクトがありました。

続いてミキモトは、2021年に発表した”黒”の世界観に染まる「パッションノワール」のグローバルキャンペーンに俳優・菅田将暉さんを起用し、スタイリングビジュアルとショートムービー「JAPANNED☓MASAKI SUDA」(2021年12月全4本公開)を製作。ジェンダーレスの表現を用いて、真珠のさらなる可能性である強さ、神秘、漆黒の魅力を伝えています。

ファッションは男女でシェアして楽しむ!

ファッションはスーツ、シャツ、デニムといったメンズアイテムを女性らしく解釈して着こなしてきた歴史があるので美容やジュエリーに比べてジェンダーレスの敷居は低いのですが、それでも展示会やリリースで「ジェンダーレス」「ユニセックス」という言葉をよく聞くようになりました。オーバーサイズやリラックス感のあるシルエット、スポーティなどのトレンドからユニセックスのウエアが増えてきて、男女で「洋服のシェア」を楽しみやすくなったことも要因です。昨年はコートやジャケットなどのアウターやニットのサイズ展開の幅を広げて、男女の区別をなくしたラインナップも増えました。

NYコレクション参加の日本ブランド「ADEAM」は、東京のストリートファッションを取り入れた「ジェンダーニュートラル、サイズインクルーシブ」を掲げた新コレクション「ADEAM ICHI」を2021年秋からスタート。キャンペーンモデルには、アメリカを拠点として女優・モデル、LGBTQ+の人権活動家、自身もトランスジェンダーであるハリ・ネフを起用して、ジェンダー多様性へのメッセージを強く打ち出しています。

まとめ

かつては顧客や読者が「こうなりたい!」と理想とする女優やモデルがアンバサダーや広告モデルに選ばれ、「その人を通してブランドの世界観に自己投影できる」ことが大切でした。

しかし今は、InstagramやTik Tokなどでも広告展開して、もっと気軽に多くの人にブランドの世界にアクセスしてもらいたいと考えると、男性女性に関わらず、ターゲット層が好む「好きな人(=推し)」を出したほうが認知度アップには効果的です。

確かに私も推し俳優のInstagramのフォローをしていると、自然とそこにアップされる広告や動画もチェックするし、ジェンダーレスをプラスにとらえて発信するブランドは新鮮でポジティブに感じます。

女性ファッション誌編集者として「女性らしさ」を考えてきた私には、「ジェンダーレス」は大きな変換です。今の時代が求めているニーズやテーマを、デジタルのツールを使ってどのように魅力的に伝えられるのか、真摯に考えてみたいと思います。

Photo/Getty Images

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