自己紹介よりも、他己紹介。

Summary

このコラムでは、Pomaloのクリエイティブディレクターである引地海が、自身の経験をもとに解釈したコミュニケーションの本質や考え方、関係づくりのアイデア、そしてそれらの着火点になる「情熱」について論じていきます。実体験による独断と偏見、さらに歪んだ自意識をベースに好き勝手に書きますので、変わり者の偏った意見だと思って、ご笑覧いただければ幸いです。

1分間で自己紹介、すぐできますか?

さて、前回は「豪快な人は自分が豪快な人だと思っているか?」という例題をもとに、自分が伝えたいことと他者に伝わることは乖離していることが多い、というお話をしました。それを踏まえ、主観と客観をどう取り入れていくか。今回はそんなお話をしたいと思います。

ポイントは、自己紹介よりも、他己紹介を意識する、ということ。

例えば、今、この瞬間に「初対面の人に向けて、1分間で自己紹介をしてください」と言われて、自分の納得のいく自己紹介ができる方はどれくらいいるでしょうか?普段からその訓練をしていれば別ですが、普通は結構迷っちゃいますよね。しかも例え自分の思い通り話せたからと言って、前回の議題であった通り、相手に伝わるとは限りません。

では、今、あなたの隣にあなたの親友がいるとします。そして私がその親友に「あなたのことを30秒で紹介してください」と尋ねたとします。その時、親友は何て答えるでしょうか?その内容にあなたが納得するかどうかは別にして、きっと聞いてる方からすると、すっと入ってくる、信憑性の高い、的確な言葉が出てくる気がします。

きっとあなた自身も同じなはず。自分のことはうまく紹介できなくても、あなたの親友の他己紹介をすることは、結構すんなりできたりする。場合によっては、先日一緒に行った旅行のエピソードなんかを引っ張り出して、この人はこういう人なんです〜、なんて流暢にお話しできる気がしませんか?

自分を編集することは、もどかしさとの戦い

この観点が、僕はPRやコミュニケーションにおいて、非常に大切だと思っています。特に個人メディアやSNS、オウンドメディアが普及し、いつでも発信する側に立てる現代において、主観だけでなく客観を持つ=受け手のことも考えるという大切な要素が、ここに詰まっていると思うのです。

しかし、これは思っているよりも難しいこと。だって自分は自分のことをたくさん知っている訳ですし、あれも言いたい、これも言いたい、こういう側面もあるし、こういうことにも興味がある、などなど色々話したくなるのが人の性。手持ちのカードが10枚あれば、その10枚を全部伝えたい!となりますよね。

でも正直、受け手はそこまであなたのことを思っていない。というか、正確には、そこまであなたのフルフルの情報を求めている訳ではない。相手があなたのためにとっているキャパシティはせいぜい1〜2枚、というのが実際のところなんです。その時あなたは手持ちのカードの中から、適切な1枚を選ぶことができるでしょうか?

あなたの価値はあなたが決める。でも他者にとってのあなたの価値は、他者が決める。

これは地域創生のお仕事をする際、行政の方や、職人さんなどによく話すのですが、「色々魅力がある(カードが10枚ある)のはわかりました。ではその中で一番伝えたいことって(カードを1枚出すとしたら)なんですか?」と聞くと、結果、「東京にないものがあります」みたいな返答になることが多いんです。いやいや、そりゃそうでしょ、だって東京じゃないんだから。もしくは他の45道府県も同じこと言いますよ、と。

と偉そうに言いつつも、じゃあ常にお前は的確な1枚を選べるのか?と言われれば、そうではありません。ただ、不要な5枚、を選び取り除くことはできる。僕らの仕事は10枚のカードを持って向かい合うふたりの間に入り、必要な1枚を選ぶのではなく、それぞれ不要な5~6枚を排除して、より合理的なコミュニケーションをとってもらう、ということだと思っています。

そして肝心な、最適な1枚。それは相手次第。その1枚を探すジャーニーを根気強く続けていく。その気概こそが現代のコミュニケーションにおける基本姿勢なんだと思います。これからのコミュニケーションはキャッチボール。ただボールを投げるだけではなく、相手が取りやすいところに投げる、という意識が必要です。次回はそのキャッチボールに関して、お話ししたいと思います。

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