サイエンスとアートの境界に挑む ~ データサイエンスの視点から

Summary

Pomaloコンサルティング部 の岩井です。

Pomaloにはデータサイエンティスト第一号としてジョインし、左脳担当としての役割を期待されているはずですが、あえて柔らかい切り口で「Pomaloにおけるデータサイエンス」について述べていきたいと思います。
(注:これは私個人の意見であり、Pomalo 株式会社全体の価値観とは必ずしも一致しない部分があります。)

一言でいうと、「Pomaloにおけるデータサイエンス」が目指していくことは、サイエンスとアートの境界に挑むということだと私は考えています。

データサイエンスの役割

そもそも、ビジネスにおけるデータサイエンスとは一体何なのでしょうか。

データサイエンスは「サイエンス」の名前がつく通り、経営における何らかの意思決定に対して科学的な根拠を示し、()理屈と再現性をもたらすということが最も重要な役割です。

よくあるデータサイエンスが関わるビジネス上の問いは、
・今まで何となくの肌感覚でやってきたことに数値的な根拠を示す
・「もっと良い選択肢があるのでは?」と定量的に提案する などです。

これらは、特定状況下での選択肢の最適化問題を解く、と言い換えることもできます。
「最適化」とは、制約下での関数の最小値もしくは最大値を求めることです。
機械で最適化を行えば、把握している範囲内における答えを簡単に見つけ出すことができます。

例えば、3つの車輪を使った最も安定した乗り物を考えるという問題。
車輪の配置を何度も試行錯誤すれば、最終的に前に1輪、後ろに2輪を並べるという三輪車のような配置になっていく・・・そして、これが3つの車輪の最適形態となります。
一方で、「あのさぁ・・・車輪は4つの方がいいんじゃないの?」みたいなことは提案できない。

「改善」はできるけど、「革新」はできない。
それがデータサイエンスの強みであり、弱みでもあります。

Pomaloの提供価値

澄川が書いている(https://www.pomalo.jp/findings/pomalo/)ように、Pomalo は右脳と左脳のメンバーが同時に在籍し、そしてそれぞれの文化が同時に存在する、かなり珍しい会社です。

その中でも、ファッションや雑誌が出自のメンバーが多いPomaloの提供価値の中心にあるものは「アート」的なものだと思っています。

ひらめき、暗黙知、属人的で感覚的なもの。
再現性のなさこそが価値であるとも言えます。

一方、Pomaloがもう一つの足を置いているデジタル(Web)の世界は、いわば閉じられた経済圏。徹底した定量の世界です。
どんな人がいつどんな行動をしたのか、ログから全て把握することができます。
そのため、全ての指標を数値化し最適化していくことがデジタルにおけるマーケティングの定石として長らく考えられてきました。

それ故に、デジタルの世界は、まさにデータサイエンスの主戦場でした。

しかしながら2022年現在、そんなデジタルにおけるマーケティングの在り方に限界が見えつつあると私は考えています。

非線形的に増大するデータ量に、日進秒歩で高度化するツールが溢れ、あらゆる数値を(以前と比べて)簡単に分析・最適化することができるようになっています。

そして、最適化は「再現可能」なため、施策は画一化していきます。
事業へのパッションよりも、機械に労働をさせる技術が重要になり、ビジネスはますますドライになっていく。

そんな時代だからこそ、デジタルにおいて、右脳的なものの価値がますます重要になっていくのではないでしょうか。

サイエンスとアートの融合

では、右脳的なだけが大事かと問われると、もちろんそうではありません。
盾と剣のように、右脳と左脳それぞれの強みを組み合わせ、革新と改善のサイクルを回すことが重要です。

Pomaloにおけるサイエンスとアートは、どちらも方法論としてスポット的にインストールされているわけではなく、カルチャーレベルで両者が存在しています。

再現性を目指すサイエンスと、非再現性に価値を見出すアートは深いレベルで衝突しうるものです。
水と油のような両者の境界を溶かし、再定義していくことが求められています。

サイエンス側の人間としては、アートの側への領域に如何に足を踏み入れていけるかが大きなミッションです。
しかし、領域を侵犯しても、植民地にしてはいけない。
慎重に、融解、統合、融合、そして再度境界を引き直す。

データサイエンスの再定義

そんな環境の中で、データサイエンスの在り方も変化しなくてはならないと感じています。

上記のように、これまでは、データを見て、問いをうまく解けるようなモデルを作っていくことが重要でした。

しかしこれからのデータサイエンティスト像は、データサイエンスを一つの道具として扱い、領域侵犯をしていける人物に置き変わっていく、と考えています。

「データ駆動」ではなく、「データ活用」を目指す。
それは、今までの数値のみを見るようなドライなデータサイエンスから、より人間的なウェットなデータサイエンスへ。

新しいデータサイエンスのあり方を考えていきたいと思います。

note も書いているので、ご愛顧ください

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