Client Company
「ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献」することを経営理念に掲げる株式会社三陽商会は、MACKINTOSH LONDONやPaul Stuart、EPOCA、AMACA、TO BE CHICなど、国内外様々なブランドを展開する、1943年創業の総合ファッションアパレル企業です。
Overview
https://www.sanyo-stylemagazine.jp/
三陽商会が運営するオウンドメディア「SANYO Style MAGAZINE」は、いま着たい服や、明日役に立つ着こなし情報が満載のファッションWEBマガジンです。Pomaloはメディアの構想段階からサポートし、立ち上げおよび運用の支援を行いました。運用面ではトラフィック増加のためのSEO施策から、そのほかの販促物との連動までをサポートし、三陽商会の新たな集客チャンネル構築に成功しています。
Point
- 「ブランド価値の担保」と「コンテンツの量産」を両立させるため、これまでのノウハウを生かしたコンテンツ制作体制を構築・運用
- オンライン施策にとどまらず、各種印刷物などにも制作したコンテンツを展開・連動させて、運用コストを増やさず販促施策の拡充を実現
Project Members
- 口分田 直丈[Naotake Kubuta](株式会社三陽商会 デジタルマーケティング戦略本部 副本部長 兼 マーケティング・コミュニケーション部長)
- 兼清 優羽[Yu Kanekiyo](株式会社三陽商会 マーケティング・コミュニケーション部 宣伝・販促第二課 EPOCA UOMO 課長代理 SANYO Style MAGAZINE編集長)
- 高橋 崇之[Shuji Takahashi](Pomalo株式会社 代表取締役CEO)
- 児玉 大也[Daiya Kodama](Pomalo株式会社 プロデューサー)
Story
ファッションブランドにふさわしい、編集者の手が入ったSEOコンテンツ
SANYO Style MAGAZINE(以降、SSM)は、三陽商会が運営するオウンドメディアです。Pomaloが立ち上げを支援したSSMは2018年4月に無事リリースとなりましたが、運用から数ヶ月が経過し徐々にPVが停滞してしまいます。これに対してPomaloが提案した施策は「SEOコンテンツの制作」でしたが、ブランドイメージを重視するファッション業界では抵抗感があることも予想されました。
--SSMをリリースした後、今度はどのような取り組みを進めていったのか教えてください。
口分田:リリース時の当面の目標を「70万PV」と定めていまして、リリースから数ヶ月間はずっと右肩上がり状態だったのですが、ちょっと頭打ちになった時期がありました。具体的には20万PV前後で停滞していまして、このまま同じことを続けても飛躍的に伸ばすのは難しいなと感じていました。一方で、SSMのコンテンツを見た方のプロパー(正規価格)での商品購入については良い結果がでていました。
--こういった状況に対してPomaloではどのような打ち手を考案したのでしょうか?
児玉:実施結果数字を検証する上で、見るべき指標はPV数(集客数)とSANYO i Store (以降、iStore)への送客数、そして売上貢献度の3つです。その中でも売上貢献度は高かったため、母数となる集客数の向上が最重要課題となりPV増加施策を検討しました。
立ち上げ後、一定期間は広告配信を実施していたのですが、予算検討の中で広告配信を行わないことが決まり、そのタイミングでPVが顕著に停滞してしまいました。そこで広告を使った一時的な集客に頼るのではなく「継続して自力で集客する装置が必要」と考え、自然検索流入の増加 = SEOコンテンツを検討しました。ただ、一般的なSEOコンテンツは 「トンマナ」がファッションブランドに合わない。そこで、SEOコンテンツの制作フローに、ファッション専門の編集者の監修を加える混合型チームによる制作体制をつくりあげて提案しました。
--この提案について、どのように感じられましたか?
兼清:これは弊社の悪いところなのですが、新しい施策に対して、必ずしも前向きではない時があります。今回の施策についても、プロジェクトメンバー内から反対の声がありました。とはいえ、やってみなければ分からない部分もあったので、SSMは新しい取り組みを行うプロジェクトとして「まずはやってみよう」ということで2020年3月ごろから進めることとなりました。
目標だった70万PVを無事に突破し、自走するオウンドメディアへと成長
ブランドイメージの発信とSEOコンテンツは水と油。その相性の悪さを克服し、目標となる70万PV達成へとつなげることができたポイントは、愚直な「すり合わせ」でした。
--SEOコンテンツ記事施策を実行するにあたって、ポイントになった点を教えてください。
児玉:現に、最初の頃にアップしたSEOライターによる原稿を優先したコピーでは、掲載が不可、もしくはアップ後に非公開に戻すという状況でした。ではどうするかということで、集客と監修のバランスコントロールに力を入れました。集客を伸ばすと考えるとSEOライターの原稿の内容を優先したいが、ブランディング観点ではNGとなる。集客優先かブランディング優先かのバランスをみてクオリティコントロールをどこに落とし込むと良いのか。ブランドとしては使いたくないが、SEOを考えると使いたい画像のセレクトも含め、どのような塩梅で落とし込むかを細かく編集者が調整をし続けました。そうやってすり合わせを繰り返していくことで、ライター・担当者それぞれにもコンテンツの方向性やトンマナについて理解を深めてもらったと感じています。結果として集客に貢献しながらもブランド担当者も納得できるコンテンツを時間やコストを抑えながら増やすことができました。
兼清:現在は無事に目標だった70万PVを突破し、80万を超えています。社内的にも信頼を勝ち取れたので、ブランドサイドから何かを言われることもありませんし、各プレス担当からも任せられています。目標達成するのはモチベーションにもつながりますし、社内を動かすという意味でも大事だなと改めて感じました。児玉さんをはじめPomaloのメンバーには「これをやりたい」の具現化をいつもしていただいているので、とても助かっています。
デジタルからリアルへ、SANYO Style MAGAZINEは拡大
SSMプロジェクトはオンラインで順調に成長し、活躍の場をリアルに広げていきます。2021年からは、リアルSANYO Style MAGAZINEの制作と配布も実施し、確かな手応えを感じました。
--SSMを運営して、思わぬ発見はありましたか?
兼清:SSMの集客結果はSANYO iStore(以下、iStore)での売上だけだと思っていたのですが、アンケートをとってみると、記事をきっかけに店頭に行ってご購入いただくパターンも多いことがわかりました。ここから、実際の店舗スタッフを起用したコーデ企画をはじめるなどして、コンテンツの幅を広げるようにしています。「あ、記事に出ていた方ですよね?」って声をかけられるスタッフも出てきたようです。
--ブランド担当者とのリレーションの変化は、何かありましたか?
兼清:立ち上げ時はSSM編集部から「お願いします」というスタンスでしたが、今では80万PVのオウンドメディアに成長しているので、ブランドの売上に明確に貢献しているという認識も広がり、逆に向こうから「これを紹介してほしい」と言ってもらえるようになりました。
口分田:あとは、紙媒体を使ったOMO施策も新たに実施しました。デジタルの良さがたくさんある中で、紙でしか伝えられないこともまだまだあると思い、プリント版となる「リアルSANYO Style MAGAZINE」を制作。まずはトライアルとして2021年11月から10万部印刷し、7万5,000人の会員に郵送して残りは店頭で配布しました。
実施結果を見ると販売に大きく貢献したことがわかったため、今年(2022年)の春にさらにパワーアップした強化施策としてやっていく予定です。
※三陽商会では、「SANYO MEMBERSHIP」と呼ばれる会員プラットフォームがあり、120万人以上の会員母体となっている
児玉:ちなみに、こちらのコンテンツについては当然ですが、オウンドメディアでも掲載しています。WEBページとしてのリコンテンツはあえて行わず、レイアウト修正程度に留めて世界観を変えないようにしています。
「トータル三陽」に向けた、ますますの支援に期待
デジタルからリアルへと展開し、売上という実績にも貢献するSSM。何が次の一手となるか、そして、その一手を打つために何が必要か。三陽商会のみなさまに聞きました。
--今後、SSMをどう成長させていくか。また三陽商会さまとして今後検討されていることを教えていただけますか?
兼清:引き続き多くの方にご覧いただけるようなコンテンツを配信していくためにも、読者にとってより面白いコンテンツを作りたいです。例えば最近では、自分の体型をより良く見せることへの需要が高まっているので、そこをサポートできるような、よりパーソナライズされたコンテンツを作って発信していきたいと考えています。
口分田:色々な施策があると思いますが、いつもPomaloさんに「最後はお客様に聞きましょうよ」と言っていただきます。一つひとつ、顧客の声を拾っていって、お客様視点で満足度を高めるアクションを続けることで、色々な発展が見えてくるかなと信じてやっていきます。
また今後弊社では、トータル三陽としてプラットフォームや施策の統合を考えています。SANYO Style MAGAZINEという枠に閉じることなく、トータル三陽としてどんな目線で顧客へのアクションをすれば良いか。ここについて、ますますご支援を期待したいなと思います。
Credit
- 執筆:長岡武司
- 撮影:太田 善章