Client Company
130以上の国と地域にたばこ製品を販売する「たばこ事業」を中核とし、多事業を展開するJTグループ。スポーツ・文化支援やサステナビリティへの取り組みも推進している。
Overview
葉たばこ生産者の顔やJTのサステナビリティへの取り組みが世の中に伝わっていないという課題感を持っていたJT。数年間のマーケティング支援を通じてJTの事業理解を深めていたPomaloをパートナーとし、顧客ロイヤリティ向上、社員へのインナーブランディングを図るサステナビリティ関連のコンテンツを制作しました。
Point
- JTのサステナビリティへの取り組みに対するヒアリングとファクトチェックを徹底的に行い、コンセプトから一緒に設計。
- 企業視点で一方的にサステナビリティの活動を紹介するのではなく、その活動において不可欠なパートナーである葉たばこ農家に思いを語ってもらう新しい枠組み、「JT with Famers」を立ち上げた。
Project Members
※写真右から
- 山田 太郎様 [Taro Yamada](JT国内たばこ事業原料部主任)
- 張 モウジ様 [Moji Cho](JT国内たばこ事業原料部主任)
- 滝口 泰介様 [Taisuke Takiguchi](JTサステナビリティマネジメント部課長)
- 尾崎 慎様 [Shin Ozaki](JTサステナビリティマネジメント部課長代理)
- 引地 海 [Kai Hikiji](Pomaloクリエイティブディレクター)
- 鈴木 聡 [Satoshi Suzuki](担当エディター)
Story
事業課題を解決するための「葉たばこ×サステナビリティ」の新たな枠組み作り
Pomaloは数年前から、JTグループの会員限定サイトのコンテンツ支援を進めており、それを通してJTへの事業理解を深めてきました。その信頼感のもと、JTグループから「サステナビリティ観点での情報発信活動の支援」という新たな相談をいただいたことで、新しい枠組みを作るプロジェクトがスタート。本取り組みにおいても、数値に表れない生活者の行動や関心を「知る」というPomaloの強みが生かされました。
――サステナビリティマネジメント部において、コンテンツ制作のご相談に至った背景、当時抱えていた課題を教えてください。
JT山田:発端はサステナビリティマネジメント部と原料部の担当者間の雑談でした。私たち原料部としても、「これまでと違った切り口で葉たばこの魅力を発信していきたい」という中で、「地域とのつながりやその生産方法において、葉たばこはサステナビリティの宝庫ではないか」というアイデアが出てきたのです。
それを何かしらの形で発信していけないだろうかと考える中で、これまでもお世話になっていて、葉たばこのことや弊社のことを理解してくださっているPomaloの皆様とタッグを組むことを考えました。
JT滝口:サステナビリティの取り組みについて、Webサイトを通じ、開示・発信することは弊社にとって重要な営みです。ただ、基本的にはメインの閲覧者である第三者評価機関やNGO、投資家の方々に向けた、「全社的な施策」や「経年データ」の提供が中心になっています。今回の「JT with Farmers」は、弊社の柱となる「たばこ事業」の原料(葉たばこ)について、物語性をもったサステナビリティ実現のケースとして発信している点でとても分かりやすく、魅力的な取り組みだと思っています。
引地:過去の記事制作において、原料部の方々や葉たばこ農家さんのお話を聞いていく中で、葉たばこ農家が全国に約2,300軒(2022年実績)もあることや、その全員がJTと契約していて、しかも全量購買制があるので農家にとっては基幹事業になっていることなど、僕らの知らなかった面白い点をいろいろ発見できました。
これらをただ発信するだけでなく「JT with Famers」という枠組みを作れば、サステナビリティへのメッセージを広く打ち出せるのではないか。そのためにポイントとしたのが2つです。
1つは、これまでにJTさんの中でも直接的な取り組みがなかった「葉たばこ×サステナビリティ」についてきちんと表現すること。もう1つは「インナーブランディング」です。社員様同士が別の部署でどんな活動をしているのか、自分たちの事業のまわりにあるものは何なのかを知ることができ、さらには重要なステークホルダーである葉たばこ農家さんについて詳しくなることができるようにしました。
社員とステークホルダーに対し、新たな気づきを生む工夫
――コンテンツ設計の際にこだわったポイントがあれば教えてください。
引地:葉たばこ農家さんは、我々が思っていた以上に横のつながりが強く、競合意識よりも仲間意識が強いです。このコンテンツが、約2,300ある農家さんたちがうまくつながるための布石になれば良いなとも思っています。そのためにも、記事を読んだ他の農家さんに「次はうちも出たい」と思わせるような魅力のあるコンテンツにしようと考えたんです。
鈴木:「SDGsウォッシュ(実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せかけること)的にならないように」ということは強く意識しました。
JTさんのような大企業だと、主語が大きすぎるので、どうしても生活者にとってのリアリティに欠けるというか、実感値を持って捉えるのが難しいことがあります。そこで今回の取り組みでは農家さんを主語に、1人の人間ドラマとして表現することで、その想いや熱量を伝わりやすくしています。
さらに今回は、ドローンを飛ばして、葉たばこ畑の美しい風景を撮影し、コンテンツに加えました。全国各地にある葉たばこ農家の地域性を出して情感に訴えることで読者が知らなかった葉たばこの世界に誘うことが狙いです。
JT滝口:宮古島であれば、畑のすぐそばに海が見えますし、東北であれば物静かな雰囲気が醸し出されていて、記事ごとのコントラストが面白かったです。まさに情感に訴えられて、「この見せ方はすごく良いな」と、何度も動画を見返しました。
――「JT with Famers」ローンチ後の反響について教えてください。
JT尾崎:社内SNSで周知するとその日のうちに一定のアクセスがありますし、何より評判が良いですね。記事を読んで感動したという感想までもらっています。
JT張:私は農家さんの選定から取材のアテンド等、Pomaloの皆様と一緒に記事制作をさせていただきましたが、取材を通して改めて「ここがサステナビリティのポイントなんだ」「葉たばこ農家さんって素敵だな」などたくさんの新たな気づきがありました。様々なストーリーを持つ農家さんたちが全国にまだまだいらっしゃいます。
JT山田:農家さんからの反響もとても良かったです。農家さんたち自身「自分たちの営みがサステナブルなものである」ということを知らない方がたくさんいたと思うので、それを少しでも知ることができるきっかけになれば良いなと思います。
この取り組みを「種」とし、様々な方向に育てていく
――Pomaloのコンテンツ設計や仕掛け方について、どのように感じられましたか。
JT尾崎:「このプロジェクトに対して、本気で向き合ってくれているな」と強く感じています。プロジェクトに関わる内部の人間が「あ、そうだよな」と気づかせてくれるような表現ができるのは、プロジェクトはもちろんJTのことを知り、JTの取り組み、農家さんのことをよく知ろうとする皆さんの熱量の高さから生まれていると思います。
JT滝口:ある社員の方が「この記事を書いた方は本当にJTのことをよく知っていて、すごい」と絶賛していました。今回は単純なプロモーションではないですし、たばこという商材の特性上、制約がいろいろある中で本当にうまく構成していただけたので、感謝しています。
鈴木:僕ら編集の人間は、時代の価値観や空気感を比較的早めに感じとり、アウトプットしていくのが仕事です。今回は葉たばこ農家さんという存在を、新たな見せ方で表現することで、葉たばこ農業やそこにあるサステナビリティに対するイメージをアップデートできたのかなと思います。
――今後取り組みを広げていきたい領域、トライしてみたいことがあれば教えてください。
JT張:今回の目的の1つはインナーブランディングでしたが、全国の農家さんにも「JT with Famers」について知っていただきたいと思います。そのために、全国の農家さんに配布する新聞などに「JT with Farmers」の連載を紹介すること等、周知を進めていこうと検討しています。
引地:せっかく今後につながる「種」ができたので、もちろんこれを続けていくことも1つですが、新しい試みや新しいコミュニティ、ネットワーク作りの起点にしていきたいと考えています。
鈴木:葉たばこ農園のドローン動画や農家さんのリアルなストーリーなど、僕らしか取れていない良い素材がたくさんあるので、できる限り多くの人に届けたいですね。
JT山田:おっしゃる通りですね。これを機会に、今後はより動画制作に力を入れていきたいねと社内で話しています。また「葉たばこ×サステナビリティ」をテーマに掲げたイベントなども実施して、それをまた記事で発信してもらったり、多方面に広げられる可能性があります。
JT尾崎:今回の取り組みで弊社社員自身、改めて知ったことも多いと思います。まだまだそういった面白いポイントが眠っていそうな気もしているので、今後が楽しみです。
Credit
- 執筆:落合真彩
- 撮影:杉江拓哉
日本全国に約2,300軒存在する葉たばこ農家への丁寧な取材を通して「農業に対する想いや課題」「新しい取り組み」「未来の展望」などを掘り起こし、多様なクリエイティブ表現によって社内外へと届けていくコンテンツ。たばこ産業の持続可能性を探る「サステナビリティ」への取り組みの第一歩と位置付けられている。