Client Company
「日本の医療体験を、しなやかに」をミッションに、医療現場の課題を深く理解し、最新の技術をもって今までにない医療システムを提供することで、社内外の医療従事者と一緒になってより良い未来を形作る、2016年3月設立の医療系ベンチャー企業です。
Overview
https://musubi.kakehashi.life/blog/20220225_kaitei2022
カケハシは患者と向き合う薬剤師をサポートする完全次世代型の電子薬歴システム「Musubi」など、薬局DX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートするクラウドサービスを展開しています。Pomaloは薬剤師コンテンツチームによる体制を組み、薬局業界の情報とカケハシの展開サービスを発信するテキストコンテンツの企画および制作を行っています。
Point
- 薬剤師資格を持つ編集者・ライターでチームを組むことにより、現場目線のコンテンツを生み出し、記事コンテンツへの流入が約10倍に増加
- 全体のマーケティング戦略を踏まえて「ブランディング」と「リード獲得」という両立しにくい課題に対応
Project Members
- 辻井 孝太[Kouta Tsujii](株式会社カケハシ 編集者)
- 難波 友莉[Yuri Namba](Pomalo株式会社 営業推進グループ マネージャー)
Story
「柔軟性」と「専門性」を持つチームで支援
さらなるビジネス拡張のため、リードを獲得できるコンテンツの量を増やしたいと考えていたカケハシ。Pomaloは薬剤師資格を持つ編集者のアサインで専門性を担保しつつ、マーケティングの目的に沿った柔軟な対応が可能なチーム体制でサポートしています。
--プロジェクトのスタートが、2021年8月ごろ。当時はどういった課題を持っていたのでしょうか?
辻井:リード獲得のため、セミナーなどのイベント開催や記事連載、ホワイトペーパーの配布、メールマガジンの発行などの一通りを、薬剤師資格を持つ社員が他の業務と兼任する形で内製していました。特にSEO記事やホワイトペーパーなどのコンテンツ制作体制は求める質と量に達しておらず、ビジネスとして拡張していくため、よりリードを獲得できる強いマーケティングチームにしていく必要がありました。
--パートナーにはどのような点を求めていたのでしょうか?
辻井:医療情報の取り扱いには高い専門性が求められます。そのため、コンテンツを制作する難易度も高いと言われています。
またカケハシのサービスは薬局がターゲットですが、薬局は全国6万店で、一般的な事業に比べると読者数は多くありません。そのため検索ボリュームなど、一般的にSEO記事で改善すべきポイントがあまり当てはまらないんです。
さらに「カケハシが提供する意味」のある情報提供をしたかった。こういった希望をワンストップでお願いできる、専門性と柔軟性を合わせ持ったパートナー企業を探して5社ほどミーティングをしました。
--その中でPomaloからどういった提案がありましたか?
辻井:Pomaloさんは1〜2カ月、粘り強く薬剤師の編集チームを探してくれました。ただ専門性のあるライターが集まっただけでなく、その間にPomaloさんが入ることで、薬局業界の専門性とカケハシが求めるリード獲得、2軸を担保できるというところに期待を持てました。
難波:当社の強みは全国に編集者のネットワークがあること。そこで薬剤師免許を持っていてライティングができる、さらに薬局経営のアドバイザーもしているという読者ターゲットに近いパートナーとチームを作りました。薬剤師免許を持っているライターさんは他にもいましたが、カケハシさんが求めているやり方に賛同してくれる方を探しました。
現場目線で寄り添う、カケハシの世界観をコンテンツで表現
コンテンツ制作の中で重視するのがブランディングとリード獲得。Pomaloはカケハシが目指す世界観と、現場のリアルなニーズをチューニングする役割を果たしました。
--どのようなコンテンツを増やしていこうと考えていましたか?
辻井:当社の施策の中で、リード獲得数はセミナー経由が一番多いのですが、イベントに来ない方もいるし、検索などで情報を求める方もいる。そのため、よりコンテンツのチャネルを増やしたいと考えました。また薬局業界はトレンドの変化が激しい一方、薬局経営者が必要な情報をすぐに調べられる環境がありません。カケハシは、薬局経営者に寄り添って課題解決をする存在になりたいと考えていて、そのためにはコンテンツの量が必要だと考えました。
難波:当社に求められているのは、現場目線で感じられる課題を探して企画することです。チームのライターは現役で薬剤師として働いているので、毎週ミーティングの中で「自分の薬局ではこういう状況だ」「課題にはこう取り組んでいる」という情報を交換し、どういうコンテンツにするとターゲットに届くのかと話し合っています。
--コンテンツを作る上で、どのように方向性をすり合わせていますか?
辻井:ブランディングとリード獲得の両方を忘れないように、というのは意識していますね。
また薬局は患者に薬を渡すだけでなく、地域医療のハブとなる役割を国から求められています。カケハシはそういった役割を薬局が実現するためのパートナーとして、ソリューションで寄り添っていくというスタンスです。ただカケハシが伝えたいことは理想であって、受け手には現実的ではない可能性もあります。Pomaloのコンテンツチームのみなさんから現場の話を聞き、コンテンツの立ち位置や温度感を決められるのでありがたいです。
難波:実際の薬局経営者目線に立って、今どんな課題を抱えているかを考えることはかなり意識しています。例えば制度改正に伴ってどんな課題が出てきているのかと話し合う時、対応に着手している人もいる中で、着手できていない方は何が要因だろうかとインサイトを考えていき、ではどうやって発信するかと週に2回のミーティングでチームで話し合います。
--ブランディングで意識されていることは何ですか?
辻井:われわれは「薬局経営に困ったときは、カケハシに解決のヒントがある」という世界観を作っていきたいんです。ただ、領域が決まったSaaSなので、新規顧客に出会い続けるのは現実的じゃないですし、長くサービスを利用してもらい経営支援したいという強い思いもあります。そのため、イベントでもウェブ検索でもホワイトペーパーでも、困ったときに目の前にカケハシのコンテンツがあるという状況を作りたい。一期一会にならないようコンテンツマーケティングを設計しています。
ワンチームのコンテンツ制作進行で検索数10倍、リード獲得を達成
検索ワードの提案や切り口の企画、制作スピードなどが功を奏し、検索数やリード獲得で成果が上がりました。これらの実現には、カケハシとPomaloが作ってきたチーム体制が土台となりました。
週に2回開催されているオンラインミーティングの様子
--コンテンツ制作では、どういった成果を意識してらっしゃいますか?
辻井:コンテンツはPV数ではなくリード獲得数をKPIとしています。検索流入を狙った記事でも後半部分はダウンロードして閲覧してもらうなど、リード獲得に紐づく設計で作っています。
Pomaloさんとはイベントに参加した人、していない人でコンテンツを分けるなど、いろいろなケースやユーザーを考えて企画を立てています。例えばイベント参加者には追加の解説情報となるような記事を作っていますね。また、記事はウェブだけじゃなくホワイトペーパーとして提供したりDMのコンテンツに転用したり、同じような内容でもチャネルごとに中身を少し組み替えています。
難波:現状、当社が作った記事をまとめてホワイトペーパーにしたり、記事の見せ方を工夫して会員獲得施策に結びつけたりしていくのは辻井さん。より密接なチームになっていくためにも、その全体像を設計して個別最適、全体最適を目指していこうという話をしています。
辻井:難波さんは「もっとコンテンツマーケティングの全体感を把握したい。私たちも納品した記事がPVだけ上がればいいとは思っていない」と言ってくださった。それを聞いて、もっとカケハシがやりたいこと、困っていることを率直に伝えたら、やりたいことができるんじゃないかと思い始めたんです。僕としてはパートナー企業というよりPomaloさんとの「チームカケハシ」だと思っています。
難波:取り組みの最初の2〜3カ月は、カケハシさんが抱えている課題を聞く時間が多かったです。カケハシさんは「こういう世の中にしていきたい」という企業としての意識がすごく強いのですが、お話を伺う中で編集メンバーもその世界観が理解できるようになり「カケハシの文脈であればこうではないか...」と企画や構成を考えられるようになりました。チームになるために必要な時間だったと思っています。
--結果として、どういった成果が出てきているのですか?
辻井:薬局業界では2年に1回、調剤報酬の改定が行われます。そのタイミングで社内で作ったコンテンツとPomaloさんのコンテンツを、さまざまな施策を通じて世に出したのですが、記事の検索数は通常時の10倍でした。またホワイトペーパーも作っていただきましたが、こちらも反響が大きかった。トレンド記事なので、いいタイミングで出せたのもよかったし、薬剤師ライターの方が検索ワードを設計してくださったのも大きかった。
難波:SEOのキーワードを出してから、どういった記事にするか決めるフローに、最初は多くの時間がかかっていました。最近は編集、ライティング、企画のプロセスを切り分けることでうまく回るようになってきたと思います。
「ここまで寄り添ってくれる企業はそうない」
コンテンツ制作のサイクルを軌道に乗せ、チーム作りも着実に進行。今後はよりチームを効率的に運営し、カケハシが理想とするマーケティング像の実現を目指します。
--今後の展望を教えてください
辻井:現状はわれわれがやりたいコンテンツマーケティングの世界観は実現しているとは言い切れないし、目指すレベルにも届いてはいない。ただPomaloさんは色々な企業を支援しているので知見が豊富で、仕組み作りが得意。その知恵を拝借することでスピードアップできると感じるし、シナジーも生める。こういうコンテンツを作ればこのくらいの数字になるというのが見えてきたので、目標達成できる感覚は出てきています。めちゃくちゃ楽しみですね。
難波:今は支援の幅が部分的で、辻井さんが私たちが作った記事のコンバージョンポイントを設定してくださっている。その設定までご一緒できるようになると、効率性を担保しながら記事量を増やして、よりリード獲得数を増やすことにつなげられるのではないかと考えています。
辻井:本当に奇跡のようなチームで、ここまで寄り添ってくれる企業はそうないと思います。今後は動画や音声コンテンツを作ったり、トレンドに合わせた即時性のあるニュース記事を作ったり、コンテンツのチャネルと幅を広げていきたいと考えています。
Credit
- 執筆:臼井杏奈
- 撮影:杉江拓哉