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Interview

コミュニケーション支援

編集視点のクリエイティブと企画で地域活性。「ふるさと納税」を通じて魅力を発信する島根県津和野町

島根県津和野町
編集視点のクリエイティブと企画で地域活性。「ふるさと納税」を通じて魅力を発信する島根県津和野町

Client Company

島根県の西の端に位置する津和野町。小京都の代表格として知られている。津和野町の名前の由来は、町の花としても指定されている「つわぶき」。

Overview

島根県津和野町は「山陰の小京都」ともいわれる風光明媚な土地ですが、近年は観光客の減少などに悩まされてきました。Pomaloとの取り組みでは「ふるさと納税」を通じ、こだわりを持って作った農産物や地域の思いを合わせて外部へ発信。さまざまな施策を絡めて支援しています。

Point

  • 第三者視点を取り入れたクリエイティブ開発とローカル密着型のPMO支援
  • 地域住民を巻き込み、新たな商品開発とプロモーションコンテンツを企画開発

Project Members

  • 佐伯 晃様[Akira Saiki](津和野町役場 つわの暮らし推進課 主任主事)
  • 澄川 恭子[Kyoko Sumikawa](Pomalo Co-Founder、コンテンツフェロー)

Story

「ふるさと納税」を、編集の力で活性化

近年、観光客の減少に悩んでいた津和野町。活性化の起爆剤として、Pomaloは「ふるさと納税」を軸にした町の活性化を提案します。その時に大きな力となったのが「編集力」でした。

--お二人の役割と、津和野町との関わりについて教えてください。

佐伯:つわの暮らし推進課の主任主事として、ふるさと納税を担当しています。主な仕事としてはふるさと納税の予算管理、大枠の戦略を庁舎や澄川さんとまとめています。私自身、出身は津和野町です。

澄川:私も津和野町の出身で、町が好きなので頻繁に帰省していました。ただ、子供の頃は観光客が多かったのに、少しずつ観光客が減り、多くの店が廃業していくのを見て「いい町なのにもったいない」と感じていたんです。そういった課題に対していろいろな対策を検討しましたが、さまざまな施策の中でも「ふるさと納税」という既存の仕組みを、うまく活用できないかと考えるようになりました。

--その「ふるさと納税を使った地域活性化」という考えを、どのようにプロジェクトとして進めていったのでしょうか?

澄川:イメージとしては4つのステップがあります。

まずは津和野町のみなさんをトップダウンで巻き込むことからプロジェクトをスタートさせました。

元々、ふるさと納税自体が自治体が税収を増やし、土地の産品を外部にPRできるプラットフォーム。その利点を有効活用するために、クリエイティブを含めた津和野町のウィークポイントを徹底的に分析して下森町長に提案しました。町長もふるさと納税の活用を考えていたようで、すぐにゴーサインが出ました。

次の段階ではステークホルダーとなる事業者や町民との関係性を構築することに注力しました。佐伯さんには農林課や商工観光課といった役場の他の部署を紹介していただき、情報提供をお願いしました。さらには、和菓子など似た特産品の町内競合をなくすために、各事業者の方と話し合い、独自性をしっかりと強めていくことも念入りに実施しました。

そうやって体制を少しずつ整えたところで、次のステップとして、商品画像や紹介するテキストなど、クリエイティブの改善に取り組みました。

佐伯:私も以前から、津和野町の良いものをうまくPRできていないという課題を感じていました。クリエイティブについては私たちも気づかない形で、いろいろと工夫していただきました。

澄川:その次の段階となる現在は、町のみなさんが気づいていない魅力を、独自の商品として世に広めていくことを進めています。

--そうやって独自の商品を考える際には、どういった点に気をつけましたか?

澄川:大事にしていたのは「寄附者の気持ちに立つ」ということです。

例えば、あるお菓子屋さんが「蕗のグラッセ」を出品していましたが、味の想像がしにくくなかなか返礼品に選んでもらえませんでした。ただ話を聞くと、実はそれまで返礼品に出していなかった無農薬で栽培し、無燻蒸で保存している栗も作っていることがわかりました。そこで、市場に出回らないそういった希少な栗を使ったグラッセや栗きんとんを返礼品として追加提案しました。また、最近ミールセットが手抜きでなく、手間を省いても美味しく食べられるということで都市部で好評なことを踏まえ、栗ご飯のミールキットも返礼品として新しく企画。こちらは限定品として出品し、すぐに完売しました。

これまで企画に関わった返礼品は150商品ほどですが、都市部の寄附者の傾向や最近のトレンドと結びつけることで返礼品として選んでいただけることが増えたと思います。


佐伯:我々にはない視点で企画していただいたのが、良かったと思います。昨年は町内に3つある酒蔵から毎月1本お酒が届く限定セットなど、いくつかのお酒の定期便コースを新しく提案していただき、多くの注文が入ったのも印象的でしたね。

生産者のこだわりを「津和野プライド」として発信

寄附者の気持ちに寄り添う一方で、町の事業者の「自分たちは納得した商品しか返礼品に出したくない」というこだわりも重視。そこで、こういった思いを「津和野プライド」という形で、消費者に伝えていくことにしました。

--「ふるさと納税」に対する町の方の反応はいかがでしたか?

澄川:津和野の多くの事業者さんは、単純に販路が広がって儲かればいいとは思っていませんでした。実際に、ある生産者さんには「自信をもって出せると納得したものしか返礼品にしたくないと、みんな思っているはず」と良い意味でのお叱りを受けました。確かに、伺ったどの事業者さんも​​みなさん、同じ趣旨の話をされるんです。そこで、そういったこだわりを「津和野プライド」と名づけて、施策に取り入れることにしました。

--どういった形で「津和野プライド」を掲げ、取り組みに反映していきましたか?

澄川:まずは返礼品をお届けする際に、一枚のハガキを添えてお届けすることにしました。表には「津和野プライド」とは何か、どういう想いを込めて返礼品を作っているかを解説し、裏には知り合いの事業者さんに、メッセージとイラストを描いてもらいました。ただイラストレーターに頼むのでなく、実際に作っている方に描いてもらったことで、ほっこりする優しいタッチの絵柄や、地方特有の方言を生かしたメッセージになっており、とても良かったと思います。こういうことが寄附者と事業者を「つなぐ」ことになるんだろうなと。

返礼品と合わせて送るハガキの裏に書かれた、イラストとメッセージ

佐伯:農家さんは思いを持っていても伝え方がわからないこともあるので、その思いを澄川さんに文章にしていただけることは非常に良かったと思っています。

澄川:お送りするハガキは往復ハガキになっていて、返信ハガキにはアンケートをつけています。改善点や気に入ったポイントを教えていただくことで事業者さんも励みになりますし、寄附納税者とコミュニケーションができるのが良い点です。そういう取り組みをしていくことで、寄附納税者の方を巻き込んで、リピーターになっていただけるのかなと思います。

佐伯:返信ハガキは毎年ご寄附頂いた方全体の3%程度送り返していただいており、津和野町の産物に対しておいしいとのお声や、津和野町に行ってみたいというメッセージをいただいています。津和野町へ継続的に寄附をしていただいている方からは、「昔は返礼品の数が少なくてどれにしようか悩んでいたが、最近は数が多すぎて悩んでしまいます」という温かい声もいただきました。

観光からUIターン移住まで...津和野町に訪れたくなる広報活動

外から人を呼ぶことは津和野町の課題の一つになっています。ふるさと納税を通じ、今後は観光からUIターン移住まで、足を運びたくなる体験コンテンツも発信していきます。

--これまでの活動の成果と、今後の展開について教えてください。

佐伯当町ふるさと納税の税収は毎年上昇しており全国平均を上回る形で成長しています。一方で過去には100万人を超えた観光客は減少の一途を辿っています。今後はふるさと納税を通じて津和野町の魅力を知ってもらい、観光に来ていただきたいですね。また関係人口の観点からも、津和野町に興味を持ち、我々や地域住民と共に活動する人を増やすきっかけにしたいと思っています。その中からUIターン移住に繋がることにも期待しています。

澄川:元々、実際に現地に来ていただく体験型のコンテンツは返礼品に出したいと考えていました。津和野町は自然も魅力で「山陰のマチュピチュ」といわれる、城址の石垣と雲海を楽しむツアーなど、さまざまな返礼品を出品することを企画しています。一部はすでに出品し、好評でした。

自然と触れ合う体験型コンテンツは、津和野町を直接感じてもらう良い機会

佐伯:津和野町は人口も毎年減っています。移住・定住人口を増やしていくのは簡単ではないですが、まず津和野町を知ってもらうことがスタート。ふるさと納税はそのきっかけになると考えています。

澄川:津和野町全体として抱える課題を解決していく仕組みを作れないかと考えています。そういった企画提案こそ、編集者としての視点を生かせると思うんですよね。コロナ禍の時間的ロスを取り戻せるようスピードアップして取り組んでいきたいですね。

Credit

  • 執筆:臼井杏奈 
  • 撮影:sarajya