Data informed Crafts⑥ CONCEPT/METHODOLOGY

Summary

以下が、分析思考(Concept/Methodology of Data informed Crafts)である。

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原則名

説明

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

体験の複雑さ理解

コンテンツは多次元の体験を提供しており、心理的変化を促す。コンテンツはチョコレートのようなもので、直接的な露出をする広告型に対して、体験そのものを提供するコンテンツ型の違いを理解する(広告型は、瞬間的な注意を集め、短期的な行動変容に焦点が当てられていることに対し、コンテンツ型はより深い情報や物語を提供し、長期的な心理変容に焦点が当てられている。)。

ただし、ユーザーはバナーやサムネイルなどの集客装置を通じて期待を形成し、その期待がコンテンツ体験を豊かにするという側面も見逃してはならない。

重要なのは、広告型はPV/UUなどのわかりやすい数値指標によって効果が示される一方で、コンテンツ型の価値は複雑なユーザー体験によって決まるという点。

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

コンテンツのサービス内位置づけ、最小の体験としてのコンテンツ

コンテンツがサービス内でどのような役割を果たしているかを理解することが重要である。例えば、新規ユーザー向けのオンボーディングコンテンツや既存ユーザーのロイヤリティを高めるコンテンツなど、目的に応じた分析が必要であるが、運用の中でコンテンツの担う役割が変化する場合がある。常に目的に応じた分析となっているのかを捉え直し続ける必要がある。

この延長線上として、コンテンツはサービスのPoC(Proof of Concept)として機能し、ユーザーのニーズや反応をテストする手段としても機能する側面も重要。コンテンツは、「体験」のレベルをユーザーに対して届ける側面があるので、深いレベルのユーザーニーズの検証に使用される場合がある。この場合は、通常のコンテンツの評価方法と異なり、その後のサービス展開を踏まえた上で分析設計を行う必要がある。

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

長期・短期視点の均衡

広告型は短期的な効果、コンテンツ型は長期的な効果を目指す場合が多い。分析の方向性も変わるので、そもそもどちらを目指しているコンテンツなのか?を最初に設定する必要がある。短期的な心理変化は(より)定量的な分析、長期的な心理変化は(より)定性的な分析によって効果を検証する傾向がある。

・短期的な心理変化:コンテンツの接触後すぐに行動してもらうことを目指す。特に商品紹介を通じて商品購入を促すコンテンツが多い

・長期的な心理変化:継続的(長期的)なコミュニケーションによる心理変化, 意識変化を目指す。ブランドに対する印象やブランドに対するロイヤリティなど。長期の変化は後から評価することが難しいので、事前のKPIや分析設計が要諦となる。

運用のため、短期的な心理変化は短期的かつ質的な体験の積み重ねによって達成される、とした上で、長期的な指標の代替として短期的な指標をKPIとして定める方法も有効。

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

データドリブンとビジョンドリブン

コンテンツ型は広告型に対して深いユーザーニーズに対して訴求できる可能性があることから、作り手側が受け手に対して伝えたいメッセージや感情を届ける媒体となる場合が多い。

この時、データドリブンな意思決定が常に正しいとは限らない。

・ビジョンドリブン:ありたい姿を元に、トップダウンに施策やスキーム、評価方法等を設定する。仮説ベースで進める場合が多く、結果には当たり外れがあるが、よりドラスティックに意思決定をする(0→1を作る)ことができる

・データドリブン:現状のデータを分析し、データを元に新しい施策やスキームを考える。ユーザーのニーズにより合わせやすく結果がでやすい一方で、過去のデータを元に計画を立てるので、施策全体としては尻すぼみ(データの中からしか答えを導けない)になりやすい。

 

両方のアプローチを融合させることで、データに基づいた新しい施策や、理想的なビジョンを追求することが可能になる。ビジョンドリブンなアプローチでは「伝えたいこと」、データドリブンなアプローチでは「伝わっていること」に主眼が置かれる。ゆ

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

解釈性と再現性のバランス

コンテンツは異なるメディア(音声、文字、画像、動画など)から成り立っている上、ユーザーの反応も心理変容を中心とするため複雑である(単なるUUやPVなどから測定できない)。

加えて、似たコンテンツでもユーザー反応が大きく変わる可能性がある(連続的な実体と離散的なクオリア)ため、分析結果をそのまま意思決定に使うことが難しい。

分析結果には、再現性がありつつも、コンテンツ制作者による解釈余地を持つ必要がある(再現性と解釈性のバランス)。

 

分節化・データ化という観点からは、コンテンツのデザインや体験は、分解するとその本質が失われる可能性があり、データの取得方法にも注意を払わなければならない。

コンテンツの捉え方:分析思考のセットアップ

RCTと定量的分析の難しさ

ランダム化比較試験(RCT)やABテストなどの定量的手法は、クリエイティブの効果を測定する上で有効であるが、コンテンツ型の場合は、その実施は難しい。

 

厳密にABテストの結果を導くには、要素の一部のみを変えたパターンを用意する必要がある(タイトルの1単語のみを変えたパターン、など)が、コンテンツは構成要素が多いことに加え、分解によって体験が損なわれてしまうケースが多く、パターンの量産が難しい。

また、コンテンツは制作工数・費用が比較的高くなりやすいため、制作コストの観点からも量産の難しさが説明できる。

 

この観点からは、厳密なデータ分析結果を求めるよりも、あえて分析の正しさを捨て、施策効果から出る仮説を元に別の施策を打った方がROI上好ましいという意思決定が健全である場合がある。(「施策効果とデータ分析の厳密さとのトレードオフ」)

コンテンツ分析方法

定量と定性の使い分け

コンテンツ型は分析の難しさから、定量データに加えて定性データを適切に使い分けて、より深いユーザー体験の理解を目指すことが有効である。ビジョンドリブンなアプローチ(立ち上げのフェーズ)では定性的なデータを重視するが、一定運用に乗った場合は定性的なデータを活用し続けることが難しい。そこで、定性的なデータを定量的に取得する仕組み(例:感想の選択式化やLIKEなどの抽象的な指標の導入)を構築するなどし、PDCAに活かすことが重要。

定性的なデータを定量化することは、ユーザーの体験(心理変容)を数理モデル化することにも役立つ場合が多い。

コンテンツ分析方法

基礎統計量の重要性

コンテンツ型はユーザー反応が深く多様になりやすいため、広告型よりも基礎統計量や分布などのデータを把握する必要がある。例えば、コンテンツ型はユーザーの深いロイヤリティを育てるために発信する場合が多いが、この場合、「一部のユーザーが活性化されている状態」になりやすい。この時の「平均値」にはあまり意味がなく、全体のどのくらいのユーザーがどのくらいのエンゲージメントをしているのかを正確に把握しなければ間違った意思決定につながりやすい。

コンテンツ分析方法

抽象的な分析の活用

コンテンツ型の分析は、解釈性と再現性のバランスのため、あえて粒度の細かい分析を行わず、やや抽象的な分析を行うことが有効である場合が多い。

主観的な体験は個々人によって異なるものであるため、共通指標が存在しない可能性が高い。そこで、「抽象指標」(= 「いいね」「LIKE」など)を用いてデータ化する手法が考えられる。一定の抽象性を持つ「総合点」は「再現性」と「解釈性」から、筋が良い場合が多い(例:食べログの点数)。

また、群としての分析も有効である。クラスタリング等を用い、群としてコンテンツを捉えることで、コンテンツの作り手にとっての解釈可能性・再現可能性を担保することができる。この時、重要なことはクリエイティブの中身自体は抽象化しないことである。中身を分解することはクリエイティブの本質を破壊することになりかねない。クリエイティブのどの要素がどういった影響を与えているのか、についてはなるべく制作者による解釈性の余地を残す必要がある。

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