Work

Interview

コミュニケーション支援

顧客に寄り添ったコンテンツを、部門の壁を超えて創り出す。

社内外を巻き込み、立ち上げた「SANYO Style MAGAZINE」

株式会社三陽商会様
顧客に寄り添ったコンテンツを、部門の壁を超えて創り出す。 社内外を巻き込み、立ち上げた「SANYO Style MAGAZINE」

Client Company

「ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献」することを経営理念に掲げる株式会社三陽商会は、MACKINTOSH LONDONやPaul Stuart、EPOCA、AMACA、TO BE CHICなど、国内外様々なブランドを展開する、1943年創業の総合ファッションアパレル企業です。

Overview

https://www.sanyo-stylemagazine.jp/

三陽商会が運営するオウンドメディア「SANYO Style MAGAZINE」は、いま着たい服や、明日役に立つ着こなし情報が満載のファッションWEBマガジンです。Pomaloはメディアの構想段階からサポートし、立ち上げおよび運用の支援を行いました。三陽商会では初の試みとなるインハウスでのブランド横断型サイトということで、単純なコンテンツ制作だけでなく、全社を巻き込んだ施策の策定や、集客に関する施策までをトータルで実行しています。

Point

  • 経営目線の目標数値にコミットし、トラフィックの増加から販売促進まで幅広く提案・実行。一気通貫した施策を実現できるプロジェクト体制で目標を達成
  • ブランド横断型コンテンツ制作のため部門の垣根を超えたコミュニケーションを行い「生活者視点で発信する」という新たな文化形成に成功

Project Members

  • 口分田 直丈[Naotake Kubuta](株式会社三陽商会 デジタルマーケティング戦略本部 副本部長 兼 マーケティング・コミュニケーション部長)
  • 兼清 優羽[Yu Kanekiyo](株式会社三陽商会 マーケティング・コミュニケーション部 SANYO Style MAGAZINE編集長)
  • 高橋 崇之[Shuji Takahashi](Pomalo株式会社 代表取締役CEO)
  • 児玉 大也[Daiya Kodama](Pomalo株式会社 プロデューサー)

Story

デジタルの知見+コンテンツ開発力+プロジェクト推進力に期待

オンライン上での顧客とのタッチポイント創出とECサイトでのプロパー購入比率(正規価格での購入割合)の向上が課題となっていた三陽商会。Pomaloが解決策として提案したのはブランド横断型サイトの立ち上げでした。

--Pomaloとプロジェクトを開始したのが2017年。どのような課題が社内であったのか、まずは背景事情について教えてください。

口分田:2017年の春から、自社が展開するブランドの「ファンとの繋がり」を深めるためのプロジェクトが始まりました。それに付随して、いかに既存サイトを含めたECを強化しながらブランド価値も高めていくか。この課題を検討する中で、「SANYO iStore」(以下、iStore)というECサイトの活用に着目し、Pomaloさんに相談することになりました。

高橋:もともとPomaloでは(三陽商会が保有する)Paul Stuartのブランドサイトのコンテンツ支援を行っていまして、その実績もあり今回のお話をいただきました。

SANYO iStore

--iStoreでは、具体的にどのような課題があったのでしょうか?

口分田:当時のSANYO iStoreは在庫品販売を広くやっていて、セール品比率(セール価格による購入割合)が8割くらいのアウトレットサイト的な位置付けになっていました。また、当時はブランドサイトからiStoreへ導線はあったのですが、ブランドサイトにはブランドを知っている人、興味関心がある人のみが来訪するため、集客手段としても弱いと感じていました。ほかにも、ブランドサイトでは当然ですが、全身そのブランドでコーディネートしたスタイリングを提案して。もっと市場のニーズを汲み取ったコーディネートやスタイリング提案など、コンテンツを主軸にしたいと考えていました。

--それに対してPomaloからはどのような提案をしたのですか?

高橋:「生活者との新たなタッチポイント創出」と「 iStoreでのプロパー購入比率の向上」という2つのポイントをクリアする必要があると考えました。そこで弊社からは「SANYO Style MAGAZINE」(以降、SSM)という、iStoreと各ブランド商品をつなぐ”ハブとなるコンテンツメディアの立ち上げ”をご提案しました。そして、それを進めるにあたってのポイントは、「ブランド横断型コンテンツの実現」と捉えていました。

口分田:ブランド横断のコンテンツはペイドメディア(雑誌タイアップ)でしかやったことがなく、社内だけで進めようにも、ブランド同士での折り合いがつかないことが予想されました。非常に難易度が高いであろうからこそ、外部のコーディネート役が必要と考え、デジタルの知見があってコンテンツ開発力やプロジェクト推進の経験も豊富なPomaloさんに、ご依頼することになりました。

不可欠だった在庫に関するデータ連携

まず、プロジェクトを進めるにあたって着手したのが受け皿となるメディアサイトの設計。「プロパー価格での購入者増加」というKPIを達成するためには「商品在庫データの連携」という課題を解決することが重要でした。

--SSMのサイト構築において、苦労した点や工夫したポイントを教えてください。

高橋:ファッションECで大切なことは、商品が発売されたタイミングできちんと販売につながるコンテンツが公開されることです。iStoreの販売ステータスと連動したAPIを用意し、コンテンツの中で商品の販売ステータスが自動で変わるという「ステータス管理」が行われる必要がありました。iStoreのシステムにも手を入れる必要があり、他部署であるEC担当チーム、EC構築ベンダーを巻き込み要件定義や調整を、最初の1ヶ月くらいかけて一緒に詰めていきました。

口分田:iStoreだけが一人歩きしちゃうと片手落ちでして、連携がどこまで強くて正確かがとても大事なところだったので、そこをリードしていただきました。もともと弊社には、外部システムにつなげるのが苦手な文化があったので、そこをこじ開けていただいた形になります。

高橋:コンテンツ設計に関わるタグの活かし方についても十分に議論しました。総合ファッション企業では、取り扱うブランドの増減や、ファッショントレンドとしてのニーズが変化するため、タグの分類や拡張性について、読めない未来をある程度想定する必要があります。弊社のコンテンツチームがプロジェクト構想時点からチームメンバーとして加わり、システムやサイト構築と並走して、仮説を立てながら設計していきました。

何度も開催した各ブランド長への社内説明会

プロジェクトに求められていた「新たなタッチポイントの構築」には、顧客目線でのコンテンツ制作が不可欠でした。各ブランドに対して理解を得るために、プロジェクトメンバーは積極的に社内関係者の巻き込みを進めました。

--コンテンツ制作について苦労した点を教えてください。

口分田:一番苦労したのは、やはり社内のブランドを巻き込むというところですね。SSMの目的や内容についての説明会を、ブランド長を集めて何回も開催しましたし、高橋さんにも全セクションの責任者が集まる執行役員会にお越しいただいてプロジェクトの説明をしていただきました。

高橋:各ブランドには当然ながら個別のブランドコンセプトや発信したいイメージがあります。一方で、今回のプロジェクトの目的を考えると生活者ニーズに合う幅広いライフスタイルの提案をする必要があり、ブランドを横断したコンテンツは不可欠です。「世の中がそれを見たいのか」という視点では、プロダクトアウト的なブランドコンセプトの打ち出しではなく、生活者ニーズに合う幅広いライフスタイルの提案をする必要がありました。具体的には、例えばブランドMIXでコーディネート提案するようなコンテンツは、各ブランド担当者がそのコーディネートはブランドイメージに合わないという声が出て企画に協力したくない、という意見が出てきます。僕らはいま、なぜ三陽商会でこのプロジェクトが必要なのかという事業視点に加えて、顧客視点でのコンテンツ開発の必要性や、ブランドイメージを毀損しない落としどころを設計する必要がありました。

兼清:上からのオーソライズができたら、今度は内部的な巻き込みです。ここについては、プレスルームにいる私の方でも積極的に社内コミュニケーションを進めていきました。特にコーディネート時の各ブランドのサンプル集めはコンテンツはスケジュールが大切になるので、各ブランドからのスタッフィングのご協力もありながら、うまくプレスルームを巻き込んで進めていきました。

※三陽商会では、撮影等に使うサンプルはブランドのプレス担当が管理していることから、ブランド担当者との協力関係は不可欠となる

高橋:各ブランドへの理解がある兼清さんはじめSSM立ち上げの内部メンバーの存在は大きかったです。

口分田:上位層と外部パートナーとしてのPomaloさん、そして内部で動いてくれる現場のメンバー。それぞれレイヤーを分けて、色々な角度からSSMの必要性と重要性、そして可能性を伝えていって、各コンテンツを作っていきました。私自身、撮影に立ち会うなどして「現場の動き」と「生活者目線」の両軸から離れないよう心がけていました。

「文化作りに貢献いただいたことは、とても大きかった」

ご提案から半年弱、SSMは2018年4月に無事リリースしました。今回のプロジェクトでは、単なるコンテンツ制作にとどまらず、会社の”新しい文化”を作っていくという貴重なプロセスをご一緒しました。

--プロジェクトの立ち上げでPomaloと一緒にやって良かったことは、どういったところですか?

口分田:当初の構想のとおり、生活者に ” 買いたい ” と思ってもらう企画を提案し、すぐに買える環境をしっかりと作れたことが、まずは良かったと思います。また、コンテンツの制作力についても、当初期待したとおり業界を理解した内容を考案いただき非常に良かったなと思いました。特にブランドを巻き込んだ体制については、今(2022年1月現在)でこそ当たり前になっていますが、はじめは苦労したので、そのあたりの突破口を作っていただけたのも有り難かったです。

高橋:目的ドリブンで進めることを意識しました。プロパー価格での購入比率を高めることが一番のイシューであり、プロジェクトチームの一員として二人三脚でやっていくからこそ、しっかりと結果を出さねばならないという意識でおりました。

兼清:あとは、コンテンツ制作の際に入っていただいたPomaloの方が、弊社のプレスでも名前が知られているような有名な方だったので、そのおかげでプレスの理解がとてもスムーズに進みました。僕自身はプレスルームの中でも若手の方だったので、とても有り難かったです。

口分田:総じて、会社を横断して生活者視点で発信するという新たなコミュニケーションができる文化作りに貢献いただいたことは、とても大きかったと思います。

Credit

  • 執筆:長岡武司
  • 撮影:太田 善章